ねぇ、先生。
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―――――――…
「どうなってんだ。」
「どうなってんだって言われても……あたしも噂のことは知ったばっかりだから分かんないの」
イライラしたように机を指でトントンと叩く中村さんは、大学の資料なんて一つも持ってなかった。
…あたしと先生の関係を心配しての嘘か。
「…中村さん」
「あ?」
「先生、大丈夫かな…」
先生はいつも通りだったのかもしれないけど、あたしにはどこか不安そうに見えた。ほんとに、少しだけ。
状況が状況だから話すために美術準備室に行くわけにもいかない。
「…大丈夫じゃねーよ。」
「え…?」
「いつ問い詰められてもおかしくねぇ。篠原先生みたいに若い人ならなおさら疑われる。あの人、教師達からの評判は悪くないからそこはラッキーだけど。」
中村さんが言うには、先生は他の先生たちからの信頼はいい方で、今回のことも信じてない先生達もいるらしい。
だけど、中にはほんとなんじゃないかって思ってる人もいるみたいで、噂が広まれば広まるほど、問い詰められることになる可能性は高いって。