ねぇ、先生。
「済んだことは仕方ない。それより、お前しばらく美術準備室に行くの禁止な。」
「…それは…分かってる」
「でもちゃんと話はしとけ。」
「え…どうやって…」
中村さんはため息をついて呆れ顔で「バカ」と呟いたあと言った。
「携帯ってもんがあんだろ。別に会えなくても連絡はとれんだから、これからのことを話せばいい」
「中村さん…」
「何だ」
「あたし先生の連絡先知らないよ」
うん、知らない。
だって外でデートすることがないから、知らなくたってあんまり困らなかった。
美術準備室に行けばいつだって先生に会えたから、言いたいことや聞きたいことはそこで済ませられるし、会いたくなったら行けば会えたもん。
「……は?」
「は?じゃなくて、あたし先生の連絡先知らないの。」
「何で!」
呆れ顔だった中村さんは今度は立ち上がって驚いた顔をする。
急に立ち上がったからあたしも驚いて見上げるけど、何でなんて聞かれても。
「だって…別に知らなくても困らなかったし…忘れてて聞けなかったし、今さら聞くのもどうなのかなーって」
「信じらんねぇ…」