ねぇ、先生。

「先生も何も言わなかったんだもん」

「にしてもさ、高校生だろお前。夜電話したり意味ないメール送り合ったりっつーのが楽しいんじゃねぇの?」

「何それ、意味ないメール送り合って何が楽しいの?」

少なくともあたしはそんなことで楽しめるほど純粋じゃない。

「知らねーよ。でも電話はするだろ、普通。声聞きたいって思うこと今までなかったわけ?」

「それは…あったけど、学校に来れば会えるって分かってたし、先生も忙しいかなって思ったから」


夜、急に先生の声が聞きたいって思うことは何度かあった。だけど、連絡先を知らないから実際にすることはなかった。

きっと知ってても色々考えちゃって出来なかったと思うけど。

「はぁー…呆れるわ。ちょっと待ってろ、話になんねぇわ。」

そう言うと中村さんは立ち上がって、あたしを残して出て行ってしまった。


いつもだったらこの時間はもう先生に会いに行ってるはずなのに。

先生はきっと美術準備室に1人でいる。

会いたい。

教室で目を合わせただけじゃ物足りなくて、話したいのに周りの目が怖くて話しかけることも出来ない。

この前加地くんのことを話したばかりで、あたしも、きっと先生も不安なままなのにこんなことになるなんて。
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