ねぇ、先生。

加地くんはあれから前みたいに話しかけてくるようになった。それは先生がいる前でも同じこと。

加地くんと先生の関係は変わってないみたいだけど、あまり先生がいるところで話しかけないでほしかった。

嫌いなわけじゃない。

だけど先生がいる場所で心の中にスルスル入ってくる加地くんが怖かった。

……それを先生に見られるのも怖かった。


廊下を早足で歩く音が聞こえてきて、ドアが開くと少し息を切らした中村さんが入ってきた。

「何してきたの?」

「あ?お前のために篠原先生の連絡先聞いてきてやったんだよバーカ」

「…え?」

一枚の紙切れをあたしに押し付けると、イスに勢い良く座った。イスがギシッと音を立てるくらい。

「ちゃんと篠原先生本人に聞いてきた」

「…先生、何してた?」

「美術準備室で道具の整理してた。1人だから退屈だって言ってたぞ。」

「…そっか」

紙切れには綺麗な字で電話番号とアドレスが書いてある。見覚えのある綺麗な字だった。

ちゃんと先生本人が書いたんだって、見ればすぐに分かった。
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