ねぇ、先生。

「一緒にいるのに好きだってこと以外何の理由がいるんだよ。」

「え?」

「お前篠原先生のこと好きなんだろ?」

コクンと頷く。

「だったらいいじゃん、それで。」

ノートパソコンに向き直って操作しながら話し始めた中村さんは、もう完全に先生の顔をしてた。

「中村さんって…」

「何だよ」

「バカなのか賢いのか分かんない」

「バカはお前だ。」

言われてみればそういうことで、中村さんにはいつも納得させられる。

当たり前みたいなことを言ってるけど、妙に説得力があるのは何でだろう。


「でもさ、中村さん。あたし最近先生が女の子と話してるの見るのも嫌になってきてね、ほんとにダメなんだ」

見るたびに、ほんとに先生にはあたしでいいのかな、なんて思ってしまう。

「それは篠原先生に言えよ」

「言えないから中村さんに話してるの」

「それに関しては俺はどうもしてやれない。俺に言っても何も変わらないぞ。」

やっぱり。中村さんの言葉には納得できて、それと同時に心に何ががグサリと刺さった気がした。
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