ねぇ、先生。

――――――
―――――――…

「よし…」

携帯の画面に表示された名前。

【篠原 蓮】

文字を見ただけで心臓が早く動いて、何度も押そうとした手を躊躇させる。

電話しようと決意してもう30分が経とうとしていた。中村さんに見られたら絶対呆れられる。

付き合って始めての電話がこんなに緊張するものなんだって、今日初めて知ったよ。

時間はどんどん過ぎていくのに、勇気が出ない。遅くなると先生に迷惑なのに。

だってもしかしたら先生はあたしからの電話を待ってくれてるかもしれない。

中村さんが言ってた。「咲良に教えるんで連絡先教えてください」って言ったからって。

先生がそれを知ってるならなおさら早くかけないと。だってちゃんと話さなきゃ。


意を決して電話をかける。

時計を見るといつもは寝てる時間で、何だかほんとに申し訳なくなった。先生、寝てたらごめんなさい。

無機質な音が耳元で何度か響いて、もう切ってしまおうかと思ったときだった。

『もしもし?』

先生の声が聞こえてきたのは。
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