ねぇ、先生。

「あ…えっと…」

『…茉央ちゃん?』

久しぶりに先生があたしの名前を呼んだから嬉しくて、うん、と見えないのに大きく頷いた。

『んふふ、今日はもう電話してこないかと思った』

やっぱり、中村さんが連絡先を聞きに行った時点で察してたんだろう。あたしが電話するってことを。


「先生、寝てた…?」

『いや、お風呂入ってた』

「そっか、よかった」

『茉央ちゃんは?何してたの?』

中村さんが言ってたのってこういうことか。意味のない…メールじゃなくて電話だけど。たしかに楽しい。

相手が先生だからだけど。

「…先生に電話しようって思って、ずっとドキドキしてた」

顔が見えない分、いつもより素直に言えた気がした。先生はそれを聞いていつもみたいにゆるく笑った。きっと今、ふにゃんって笑ってる。


『何それ、可愛いね』

顔は見えないけど、声が聞けるだけで今はもう胸がギューっとなった。会うことが許されない状況だからこそ。

「…先生、大丈夫…?」

『…んー、俺はちょっと前から噂のこと聞いてたから、覚悟はしてたんだよね』

「そうなの?」

『うん。』
< 346 / 451 >

この作品をシェア

pagetop