ねぇ、先生。
「あ…えっと…」
『…茉央ちゃん?』
久しぶりに先生があたしの名前を呼んだから嬉しくて、うん、と見えないのに大きく頷いた。
『んふふ、今日はもう電話してこないかと思った』
やっぱり、中村さんが連絡先を聞きに行った時点で察してたんだろう。あたしが電話するってことを。
「先生、寝てた…?」
『いや、お風呂入ってた』
「そっか、よかった」
『茉央ちゃんは?何してたの?』
中村さんが言ってたのってこういうことか。意味のない…メールじゃなくて電話だけど。たしかに楽しい。
相手が先生だからだけど。
「…先生に電話しようって思って、ずっとドキドキしてた」
顔が見えない分、いつもより素直に言えた気がした。先生はそれを聞いていつもみたいにゆるく笑った。きっと今、ふにゃんって笑ってる。
『何それ、可愛いね』
顔は見えないけど、声が聞けるだけで今はもう胸がギューっとなった。会うことが許されない状況だからこそ。
「…先生、大丈夫…?」
『…んー、俺はちょっと前から噂のこと聞いてたから、覚悟はしてたんだよね』
「そうなの?」
『うん。』