ねぇ、先生。

『…茉央ちゃんから電話くるかなって思ってたから。ちょっと焦って出たね』

「先生もう10月だよ?髪とか濡れたままじゃすぐに風邪引くんだからね。服はちゃんと着てるよね?」

『…うん、着てるよー』

なんかあたし先生のお母さんみたいじゃん。こんな、小さい子に言うようなことを言って。先生の方が年上なのに。


「うそ、本当に着てる?」

『ズホンは履いてるから大丈夫』

「上の服着てないの?」

夏なら全然何も言わないけど、今は夏を過ぎてとっくに秋が来てるのに、上半身裸で電話なんて。

しかもこんな遅くに。それはあたしが悪いんだけど、先生ほんとにそういうところは適当だよね。


『着てないけど、寒くないから』

「ダメだよ。先生、ちゃんと上の服着て寝てよ?この時期に上半身裸なんてあり得ないからね」

『んふふ。ん、分かった』

きっと先生も同じことを思った。

あたしと先生どっちが年上なのって。

じゃあね、なんて言った先生は、最後にとびきり甘い言葉を残した。
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