ねぇ、先生。
「だからってそのままにしてバレたとき、一番傷つくのは咲良だから。」
それは覚えといてよ。
逃げ道を確実に塞いで、選択肢を一つに絞らせる。ほんと俺、最低だ。
「…じゃ、俺帰るわ。」
何も言わない蓮くんを1人で残して美術室を出た。
もしかしたら俺が咲良を泣かせてしまうのかもしれない。
それでもいいって思ったんだ。
ほんとは泣かせたくないけど、他の男を想って、そいつのことで悩んで泣くくらいなら、俺のせいで泣けばいい。
俺は白城みたいに優しくねぇぞ。
見守るだけの優しさなんてあいにく持ち合わせてない。他の男を見ててもいいなんて簡単に言えない。
心が狭いと言われれば、そうだと頷ける。
でもそれくらい、咲良に俺を見てほしかった。蓮くんに向ける目を俺に向けてくれればいいと思った。
…だからチャンスだと思ったんだ。
蓮くん、俺さ、蓮くんよりも咲良のこと幸せにする自信あるよ。