ねぇ、先生。
「大丈夫だよ、勉強はちゃんとしてるから。シロにも教えてもらってるし」
「それならいいけど。」
先生のことは気になるけど、だからって全く勉強してないわけじゃない。
火曜日と木曜日に美術準備室に行くことがなくなったから、一週間のほとんどを勉強して過ごしてる。
……受験生としてはいいことなのかもしれないけど、やっぱり少し違和感があったし寂しかった。
今まであったことが急になくなるとこんな気持ちなんだ。あまりいい気分じゃないってことは知りたくなかった。
「中村さん、また来てもいい?」
「だから、ここはお前の恋愛相談所じゃねぇの。お前ら来ると仕事進まねー。」
「とか言って、中村先生って茉央にはとことん甘いよね。」
「うるせーわ。」
梨花がからかうように言うと、中村さんはため息をついて「もういいから帰れ」なんて言ってあたしたちを追い出す。
あたしは中村さんが3年も担当した可愛い生徒だもんね。ちょっとだけえこひいきしたくなるんだもんね。
「じゃあね、中村さん。」
「気をつけて帰れよー」
ダルそうに言った中村さんは、またダルそうに手を振って体育準備室に帰って行った。