ねぇ、先生。
電話越しの大好きな声
何日待ってもやっぱり先生からの電話はかかって来なかった。
それどころか、教室にいる先生と目すら合わなくなった。たまたまとかじゃなく、きっと意図的に。
先生がここに来て、初めての冬がもうすぐそこまで迫っていた。
11月に入って、前よりももっと受験生っていうプレッシャーが重く乗しかかってきた気がした。
「はぁー…」
日付けが変わる少し前。
携帯の画面には【篠原 蓮】の文字。
画面を一度タップすると、先生へと繋がってしまう。前よりずっと緊張してる気がした。
電話が来なくなった辺りから先生の様子があからさまにおかしくなった。もう一週間以上話してない。
いくら美術準備室に行けなくなったとはいえ、こんなに話さないのは振られて以来だった。
…だから怖かったのかもしれない。
先生が電話をかけてこない理由が、忙しいからじゃなかったら。そんなことばかり考えてしまう。
だけど、今あたしから電話しないとこのまま終わってしまうような気がした。
それだけは嫌。
いつもみたいな先生が出てくれることを願って、一度画面をタップした。