ねぇ、先生。

何度か規則的な機械音が聞こえた。

お願い先生。

忙しくて電話出来なかったんだって、いつもみたいに笑ってね。


『…もしもし』

「…っ、あ…」

『…どうしたの、茉央ちゃん』

電話越しに聞こえた先生の声はあたしが期待してた優しい声じゃなかった。

低くて、掠れた声。


「…先生、ごめんね…こんな遅くに」

もしかして寝てたかな。だからこんなに声が低いのかな。

…そうだよね?

『…ん、何?』

先生の声が、口調が、優しい先生はそこにいないんだってことを主張してるような気がした。


「声が、聞きたかっただけなの…」

心臓が強く波打ってるのは、久しぶりの電話で緊張してるっていうのもあるけど、別の理由もあった。

…だけど、気付きたくなかった。

『…そ、ちょうどよかった。俺も話したいことあったんだ』

…嫌だ。

『茉央ちゃん、俺あれからいろいろ考えたんだけど…』

聞きたくない。
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