ねぇ、先生。
美術室と書かれたプレートが風でユラユラと揺れていた。
また季節が変わる。
半袖だったシャツは長袖に変わって、カーディガンを着なきゃ寒い時期になった。
―コンコン
ノックなんてしてもしなくても変わらないと思った。だってきっと、先生は奥の部屋にいるんだから。
返事がないから美術室のドアをゆっくり開けた。この音は奥にいたって先生に届くはず。
いつもあたしがドアを開けると、その少し後に美術準備室のドアが開いた。
…それを見るのが好きだった。
だけど、今日はそのドアが開くことはなかった。先生はいるはずなのに。
来たのが誰か分かったのかな。
奥の部屋へと歩き出すと、なぜか不安になった。多分、これまで感じたことがないくらいに。
先生はやっぱりいた。
美術準備室から微かに音が聞こえてきて、先生はわざと音に気づかないフリをしたんだって改めて実感する。
きっと、来たのがあたしだってことも気づいてるんじゃないかな。