ねぇ、先生。

「別れようって」

ここに来て初めて先生があたしを見た。

いつもみたいにふにゃんとした笑顔を一度も見せてくれない。

それがほんとだよって…本気で言ってるんだよって言ってるみたいで怖かった。


「…先生、本気で言ってるの…?」

信じたくなくて、嘘だっていつもみたいに笑ってほしくて。スカートをギュッと握りしめた。

だって確かに先生はあたしを好きになってくれた。それはちゃんと分かってる。

あたしを見つめる瞳も触れる手も話す声も、ちゃんと好きだよって言ってくれてるみたいだったの。


「うん、本気だよ」

「…っ、なんで…?」

気を抜くと涙が溢れそうだった。

「あたしのこと…っ、もう好きじゃなくなっちゃった…?」

お願いだから、違うって言って。

そんなことないよって、言って。


「ここにはもう来ないでって言ったよね」

あたしの質問には答えないくせに、笑顔でそんな風に言うなんてズルい。
< 371 / 451 >

この作品をシェア

pagetop