ねぇ、先生。

「やだ…っ」

首を横に振ると、目の淵に溜まってた涙がいくつもポタポタと落ちた。

ここで泣きたくなかった。

ここで終わらせたくなかった。

だってここは先生との関係が始まった場所だから。気持ちが通じた場所だから。


「茉央ちゃん俺にどうしてほしいの?」

いつもはそこにあるはずの大きなキャンバスが、いつのまにかなくなってた。

先生があたしのために描くって言ってくれた絵なのに、それは完成することなくどこかへいってしまった。


「あ、キスしてあげようか?」

何で……

先生、なんで今そんな風に簡単にそんなこと言うの?キスしたらあたしが納得するって思ってるの?

……そんなわけないじゃない…


「いらない…っ」

「じゃあ何?それとも抱いてほしい?」

「ちがう…っ」

そんなことを望んでるわけじゃない。
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