ねぇ、先生。
「…ほんとに、終わりなの…?」
もっと気をつければよかった。
「…うん、終わりだよ」
加地くんに揺れたりせずに、先生だけを見てればよかった。
もっとちゃんと好きって言えばよかった。
「じゃあね、咲良さん」
もっと、名前で呼んでもらえばよかった。
「また、教室で」
もっともっとここに来ればよかった。
ほんとは、名前で呼びたかった。
考えれば先生に伝えたいことも先生としたいこともたくさんあった。
後悔しても遅いと分かってるけど、少し前の自分に涙が出た。
揺れちゃダメだよ。ちゃんと好きだよって言った方がいい。みんなみたいに名前で呼べばいい。
…って、前の自分に言いたい。
振り返らないように美術室を出ると、涙がブワッと溢れてきた。今日はそれを隠す雨が降ってない。
…ポスターだってない。
あのときとは何もかも違う。
ほんとにもう、終わってしまったんだ。