ねぇ、先生。

｢俺は傍にいない方がいい｣

｢え？｣

｢茉央ちゃんのこと泣かせてばっかだから。もっと近くに、ちゃんと守ってくれるやつがいるよ｣

俺じゃない。

何となくそう思ったのは、蓮くんが俯いて悲しそうな顔をしたから。

蓮くんの言葉を聞いて一番最初に頭の中に浮かんだのは加地だった。

浮かんだのと同時に、蓮くんに何かを言ったのは多分加地だって思った。


｢茉央ちゃんが泣いてたら、あんな男やめろって言ってやって｣

｢…俺にそんな最低な役回りさせるつもりなんだ。やだよ、俺｣

｢白城くんしか頼める人いないんだよ｣

ほんと、最低な役回りだ。

俺そんなこと言いたくねぇよ。

むしろ、諦めんなって、咲良には蓮くんしかいないっていつか言ってしまいそうな気がする。

だってほんとにそう思うんだ。

咲良の隣にいるのは加地でも俺でもない。

蓮くんじゃなきゃダメな気がするんだ。