ねぇ、先生。
「……無理だよ、加地くん」
あなたを見ようと頑張っても、きっと結果的に傷つけることになる。
「0だよ、きっと」
今だって、やっぱり無意識に比べてしまってるんだから。
笑った顔を見て、声を聞いて、ノートに綴られた字を見て……先生とは全然違う、って思ってる。
「…まだ俺のこと全然知らないじゃん」
きっと知っていくうちに、今以上に比べてしまう気がするの。
「少しずつ、知っていけばいいじゃん。何も今すぐって言ってるわけじゃない」
…加地くんはどうしてここまであたしのために必死になってくれるんだろう。
「咲良だって、最初は蓮くんと付き合える可能性なんて0だっただろ。」
何も言えなかった。
それはあたしが一番よく知ってること。だってあたしとずっとそうなんだって思ってたんだもん。
「何が起こるか分からないんだって。0だったものが、もしかしたらいつのまにか1になってるかもしれない。」
…ダメだ、加地くんと話してるとやっぱり流されてしまいそうになる。