ねぇ、先生。
保健室のドアに手をかけて梨花に言った。
「梨花、先に帰ってていいよ」
気まずかったから。
それだけ言って保健室に逃げてしまおうと思っていたのに、それは出来なかった。
ゆっくりと開いたドアの向こうには、保健医の姿の他にもう1人。
「茉央…?」
不思議そうに呟く梨花が保健室の中を覗いて「あ…」と声を漏らした。
何でいるんだろう。
…どうしてここに?
「…先生」
そこにいたのは紛れも無く今考えていた篠原先生だった。
ここには無縁のはずなのに、何でここにいるの?どうして今いるの?
…もしかして、この人に会いに来たの?
美人な先生はあたしを見て「どうしたの?」と優しく聞いてくる。それすらも今はすごく嫌だった。