ねぇ、先生。
「…じゃあ、俺戻ります。ありがとうございました」
「そうですか、また何かあったら言ってくださいね」
先生はあたしに気づいたはずなのに、一度こっちを見てからはあたしを見ようとしない。
やっぱり避けられてるんだな、なんて嫌でも実感して。悲しいはずなのに涙すら零れなかった。
何もなかったみたいにあたしの横を通り過ぎて行った先生。
「咲良さん、どうしたの?」
「…あ…いや、何でもないです」
さっきまで先生がいたこの場所にずっといることは出来ないと思った。
だって、先生は間違いなくこの人に会いに来てたんだから。
「でも顔色が悪いわよ」
「ほんとにっ、大丈夫です…」
いやだ。
「…梨花、帰ろう」
「でも茉央…」
「大丈夫だから」
先生はあたし以外の人を好きになったからこういう選択をしたのかな。
そうだとしたら、あたしのこの気持ちはやっぱり先生にとって迷惑なことでしかないんだよね。