ねぇ、先生。
「先生、ほんとに大丈夫ですから…邪魔しちゃってすいませんでした」
綺麗だもん、吉野先生。
大人だし、優しいし、きっと篠原先生の隣に並んでも違和感なんてなくて…素敵なカップルに見える。
こんなにいい人が近くにいて、好きにならないわけないよね。
「茉央…っ」
すぐにでも離れたくて、梨花の呼び止める声も無視して走った。
邪魔なのはあたし。
吉野先生なら隠して付き合う必要もないし、我慢させることもすることもない。
どっちを選ぶかなんて少し考えれば分かる。あたしじゃない。
こんな気持ちになるなら、最初から何もなければよかったのに。幸せな気持ちなんて知らずに終わればよかった。
きっと吉野先生を嫌いだって思うこともなかった。そんな風に思うような嫌な女にもならなかった。
…最初から、やり直したい。
「…っ、はぁ……っ」
考えているうちにやっぱり涙は落ちてきて、走っているから息がし辛くなった。
先生との関係を後悔したくなんてなかった。ずっと好きでいたかった。