ねぇ、先生。
「ごめん、加地くん…あたし…」
「蓮くんが好きっていうわけ?」
そうじゃない。
好きだけど、もうそれを加地くんに言うのはやめにするから。
「咲良、俺はそれでもいいって言ってるんだけど」
「…ダメだよ、そんなの…」
「俺がいいって言ってんだから」
加地くんを先生を忘れるための代わりとして見るわけにはいかない。
もしもそれで気持ちが変わらなかったとき、一番傷つくのは加地くんなんだから。
「蓮くんを忘れるために俺を使っていい。それくらいどうってことないから。」
そう言って加地くんはあたしの体をすっぽり包み込んだ。
ちょうど心臓の音が聞こえる位置で、少し早いその音に胸が締め付けられた。
こんな風に何度も気持ちを伝えるのは、とても勇気がいることなんだって改めて思った。
それでも加地くんは諦めずにこうして何度も何度も言ってくれる。
それがどれだけ幸せなことか。