ねぇ、先生。

「多分、茉央ちゃんはもう俺のこと好きじゃないから」

「だから、何で…」

「俺が保健医と付き合ってるって噂が出てて、一緒にいるとこ茉央ちゃんに見られたんだよね」

何でこうも噂になりやすいのかって思ったけど、その理由は何となく分かった。

若くてイケメンな教師がいれば、生徒はそんな浮ついた噂を聞いてすぐに信じてしまうからだ。

蓮ならあるんじゃないかって感じさせる何かが、確かにこいつにはある気がする。


「ちょうどいいと思ってしばらく仲良くしてみたけど、やっぱダメだった」

「ちょうどいいって?」

「茉央ちゃんが俺のこと忘れられれば、それが一番いいと思って。だから、噂も否定しなかったんだけど」

要するに、わざと勘違いさせたってこと。

蓮には新しい彼女が出来たって知れば、茉央ちゃんは次に進めるから。

「じゃあ、ダメだったって何だよ」

「綺麗で優しいって評判だし、歳も近いから仲良くしてれば俺も茉央ちゃんのこと忘れられると思ったけど、全然ダメだった」

あぁ、そういうことか。

「すげーいい人なんだよ。でも、多分好きにはなれない」

「お前、それなら思わせ振りな態度とるのやめろよ。その吉野先生、だっけ?勘違いするかもしんねぇぞ」

「最低だって思うかもしれないけど、もう勘違いさせちゃったみたいで。この前言われた、好きだって」

< 410 / 451 >

この作品をシェア

pagetop