ねぇ、先生。
篠原先生と吉野先生が付き合ってる。
そんな噂が少し前から生徒の間で流行ってる。もちろん、あたしも知ってた。
最近先生は保健室によく行くみたいで、それを見た生徒が付き合ってるんじゃないかって言ったことがきっかけらしい。
…一度一緒にいるところを見たあたしからしてみれば、リアル過ぎて友達の前で笑うことも出来なかった。
「…あたしよりも、吉野先生の方がお似合いだし…先生があの人のことを好きになったなら仕方ないよ」
口から出た言葉は、まるで自分に言い聞かせてるみたいなものだった。
仕方ない。
何度も何度もそう思えば、きっと気持ちは薄れていくはずだから。
「お前、本気で信じてんの?」
「あたし前に2人が一緒にいるところ見たことあるから…、多分ほんとなんじゃないかな」
ここまで諦めなきゃならない状況まで追い込まれると、そうする以外に道はないんだと思えた。
諦めると言いながら、無意識に先生の姿を探してしまっていたあたしへの最後のチャンスだ。
…最後の、諦めるチャンス。
「…お前がそう思うならいいけど。後悔してズルズル引きずるのだけはやめろよ。加地に失礼だから。」
「うん、分かってる」
大丈夫、加地くんのことは絶対に傷つけたりしないから。