ねぇ、先生。
「それはいくら可愛い生徒の願いでも叶えてやれねーわ、残念。」
落ち込んだときとか、嬉しいことがあったときとか、何度ここに通っただろう。もう数えきれないくらい中村さんにはお世話になった。
大学生になって、中村さんはいないのに大丈夫かな。やっていけるかな。
「相談する相手がいなくなっちゃうよ」
先生って感覚とはちょっと違う。どちらかといえば友達に近いような。
「咲良、大学には今よりももっとたくさんの人間が学校に通ってんだ。お前が相談出来る相手は必ず見つかる。」
相談出来ないわけじゃない。
梨花やシロや加地くんにだって、悩んだら聞いてもらってる。
だけど、中村さんは他の人よりも少し特別だった。ほんとに、何でも相談出来る存在だった。
「それに、俺はアドバイスとかそんなに上手な方じゃねーぞ?」
「それは知らないけど…でもあたしはいつも助けてもらってるよ」
「…何お前、今日素直だな。」
「いつも素直だけど」
もうすぐ終わってしまうと実感すればするほど、いろんな人との別れが嫌でたまらない。