ねぇ、先生。

「俺には辛そうに見えた。」

中村さんはこうして何でも分かってくれるから、甘えてしまうし頼ってしまう。

「別に、無理に加地を選ぶ必要はないと思うけど。」

「え?」

「もう元には戻れないかもしれないけど、だからって無理に次に進む必要はないだろ?一番手っ取り早い方法だと思うけど、時間がかかってもいいんじゃねぇの?」

それ、みんな言うね。

今すぐじゃなくていいから、って。

今すぐじゃなくてもいいから、いつか加地くんを見ればいいってことでしょ?


「その相手が加地じゃなきゃダメだってこともない。焦るなよ、ちゃんと自分で決めればいいんだから」

「自分で…」

「もしかしたらこの先篠原先生を超えるくらい好きなやつが出来るかもしれないだろ。そう考えれば、お前も少しは気分が楽なんじゃない?」

篠原先生を忘れるくらい好きな人が出来るかもしれない。それはもしかしたら加地くんじゃないかもしれない。

先のことは分からないけど、急かされてた気持ちが少し楽になった気がした。


「ありがとう、中村さん」

「ほんと、手がかかるやつだよな。」

「そこが可愛いんでしょ?」

「自分で言うな。」

「んふふ、そうだね」

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