ねぇ、先生。
「あたし、卒業式の日にちゃんと先生と話してくるから」
あの日から、加地くんと先生の話をするのは初めてだった。
お互いに気を使って話題に出さなかったからかもしれない。先生の話はどんな会話にも出てこなかった。
加地くんは驚いたように立ち止まって、あたしの手首を掴んだ。
「…戻って来るんだよな?」
不安気に揺れる目が、加地くんの気持ちを表してた。
もしもあたしが加地くんのところに戻ってこなかったらって、きっとそんなことを考えてるんだろう。
すぐにハッキリと頷けないのは、あたしもどこか迷っているから。
「俺、信じて待ってていいよな?」
無理やり閉じ込めようとしてる気持ちが、先生に会って、話して、溢れて出てこないだろうか。
消えるものじゃない。
きっとこの気持ちは一生、何があったってなくならないものだから。
問題はそれをしまい込んだまま先生と話して、終わらせられるかってこと。