ねぇ、先生。

だけどすぐに帰ることは出来なくて、先生はいないのに中に入った。

入り口からは見えなかったけど、机の上に何か置いてある。


「あ…」

先生がいないことに気を取られて、それを気にする余裕はなかった。

よく見るとそれは花束で。

卒業生はみんなカーネーションを貰ったけど、それと並べると確実に見劣りしてしまうような、小さなピンクの花だった。

それはきっと、主役の花を引き立たせるようなものなんだろう。

先生がわざわざこれを選んだ理由は分からないけど、誰かへ贈るものなら、少し地味すぎるような。


近づいてそれを手に取ると、カサリと何かが床に落ちた。

メッセージカードのようなものが裏返しになって、あたしの足元にあった。

それはきっとこの花束と一緒に置いてあったもので、これを贈る人へのメッセージなんだろう。

見ちゃいけないと思いながらも、それを拾って見てしまった。
< 439 / 451 >

この作品をシェア

pagetop