ねぇ、先生。

「え…?」

紛れもなく先生の字。

綺麗な字が、一文だけ。


【卒業おめでとう】


…たった、それだけ。

だけど、これが誰に宛ててのメッセージなのかは分かった。

やっぱり先生はあたしが今日ここに来るって知ってたんだね。

…これ、あたしにだよね?


だからこの部屋の中はあたしが来てた時と変わらず、椅子は2つある。

きっとあたしが気づくように。

この花束とメッセージは、あたしへのものなんだって、気づかせるために。

あぁ、だけど…


「…そういうこと…?」

こんなことを望んでいたんじゃないよ。

花束が欲しかったわけでも、メッセージが欲しかったわけでもない。
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