ねぇ、先生。
ねぇ、先生。
あのとき座っていた木の椅子は、今座るとヒンヤリして別物みたいだった。
座ると目の前にあった大きなキャンバスも、そこにないと窓の外が前よりも広く見えるようになった。
あたしが知らないだけで、変わってしまったことはもっとたくさんある。
それをこれ以上見つけるのが怖くて、窓の外を眺めることしか出来なかった。
どれくらいそうしてただろう。
やっぱりいくらここにいても、先生は前みたいに来ることはなかった。
それは何となく分かっていたことだけど、いざ実感すると辛い。
もう十分、ここの雰囲気も景色も焼き付けた。いつか思い出したとき、綺麗な思い出になるように。
あぁ、だけど、最後に一つ。
先生に言いたかったことをここに残してもいいかな。
もうどこに何があるか覚えてしまった引き出しを開けると、そこには紙とペンが入ってる。