ねぇ、先生。
先生には悪いけど、それを借りて一言だけここに残して帰ることにした。
花束とメッセージカードが置いてあった場所に、それを置く。
先生なら、これがあたしの字だって分かるでしょ?
目の赤みも引いた。いつもと変わらないあたしで、加地くんのところに戻ろう。
そうすればきっと、彼は嬉しそうに笑ってくれると思うから。
もう一度室内を見渡して、そこを出る。
大丈夫、だよね。
ガチャンと音がしてドアが閉まると、それが終わりを告げたみたいだった。
美術室から出ると、何かがスッポリと抜け落ちてしまったみたいだった。
それでも、もう振り返らないように。笑顔で彼に会えるように、それに気づかないフリをして歩き出した。
この道を歩くのも今日が最後。
同じ道のりのはずなのに、そこはいつもより短く感じた。