ねぇ、先生。
教室につくと、中には机に伏せてる加地くん1人しかいなかった。
あたしが戻って来たことにも気づいてないみたいで、だから近づいて声をかけた。
「加地くん…」
小さな声だったけど、それは確かに加地くんに届いたらしい。
伏せていた体を起こして、あたしを見つけると手をグッと引っ張った。
「わ…!」
座ったままの加地くんがギュウッとあたしを強く抱きしめる。
手に持った花束のラッピングがカサカサと音を立てると、加地くんは初めてそれに気づいたみたい。
「…それ、蓮くんから?」
「…うん」
また、不安になったかな。
だけど、この花だけは置いて帰るなんてことは出来なかった。
きっと先生が、あたしのことだけを考えて選んでくれたんだから。
「咲良、ここに戻って来たってことは、俺期待していいんだよな?」
加地くんの声が耳元で聞こえる。