ねぇ、先生。

「…蓮くんじゃなく、俺を選んでくれたってことでいいんだよな…?」

加地くんが抱きしめる力を強めたから、苦しくてシャツをギュッと掴んだ。

「…加地くん、苦しいよ」

大丈夫だよ。

だって、あたし決めたから。


「…あたしね、もう大丈夫だよ」

この花は、先生からの最後のプレゼント。

もう会わない。

もう思い出したりしない。

「…先生にはもう会わない。」

今はまだ加地くんだけを見れなくても、この先そうなるように頑張るから。


「咲良、俺と付き合って」


ゆっくりと体を離して、あたしの目を見て言った加地くん。

不安気だった顔は、あたしだけを見つめて優しく笑った。
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