ねぇ、先生。
手に持った花を見ても、もう何も言わないのは加地くんの優しさ。
メッセージカードを見つけても、それに触れないのも加地くんの優しさ。
置いていけたらきっと、加地くんはもっと喜んでくれるんだろう。
だけどきっと、加地くんが置いていけと言ってもあたしは、これを手放したり出来ないんだ。
人がいない校内を、加地くんがあたしの手を引きながら歩く。
あぁ、あたし意外と大丈夫?
やっぱり会わないのが正解だったのかな。
先生はもしかしたら、いつまでもあたしが先生ばかりを見ないように、わざと来なかったのかもしれない。
前に進めってことだろう。
だったらやっぱりあたしは前に進まなきゃならない。
「人いねぇな。」
「だってもう終わって結構時間経つよ。みんな帰っちゃったんだよ」
「休みの日にコッソリ忍び込んだみたい」