ねぇ、先生。
「泣いてんの?」
「…ううん、違うよ」
辛い思い出もあるけど、楽しい思い出だって数え切れないくらいあるの。
それはきっとこの先も忘れないけど、やっぱり離れるのは寂しい。
「行こっか、加地くん」
「ん、もういいの?」
「…うん、いいの」
大事にするよ。
楽しい思い出も辛い思い出も。それから、この花束もメッセージカードも。
どの思い出も、強く残っているのはやっぱり先生の姿だけど。
門を出る前に願った。
あたしの残した言葉が、ちゃんと先生に届きますように。
これは絶対に加地くんには内緒。
あたしが美術室に残してきたメッセージ。
ねぇ、先生。
【先生のことが大好きでした】
これが、最後のメッセージです。
-END-