ねぇ、先生。
あたしが指差す先にはあの絵がある。
「先生、これ誰が描いたんですか?」
きっとあたしの知らない人だろうな、なんて思いながら横を見た。
そこには片手で口元を覆う先生がいて、その視線は絵から逸らされた。
「先生…?」
「えっ、と…それ、誰が描いたのか覚えてないんだよね…」
苦笑いだったから、きっと嘘ついてるんだろうなってすぐに分かった。
覚えてないんじゃなくて、あたしに知られたくないってことだ。
「でも、俺も好きだよ」
少し照れたように言った。
…先生、この絵を描いた人のことを想ってそんな顔してるの?
「…そういえば、先生が今描いてる絵にも桜入ってますよね?」
あたしのために描くと言ってくれた絵の中にも、桜の木が描かれてた。
先生、もしかして好きな人いる…?