ねぇ、先生。
桜の木に思い出でもあるの?
あの桜の絵を描いた人が好きなの?
「ん…あぁ、思い出しながら描いてるんだ。すごく綺麗だったから」
桜の絵を見つめながら言う先生の顔は、誰が見たっていつもの先生の顔じゃない。
表情はいつもより大人っぽくて、きっと大切な人を思い浮かべてる。そのくせ、どこか悲しそうなんだ。
「…先生、彼女いますか?」
「…いないけど、何で?」
彼女がいないってことは、結ばれなかった…今も片想いしてる人がいるってこと。
「ううん、先生モテそうだから、彼女くらいいるのかなーって思っただけです!」
明るくそう言うのが精一杯だった。
「…咲良さんこそ、モテそうだよね」
「モテてたら、高校3年間彼氏いないなんてことないと思いません?」