ねぇ、先生。
中村さんのよろしく、なんて声が聞こえてきたあと、篠原先生がこっちに歩いてきた。
中村さん、やっぱり任せたな。
「ポスター、貼りに行こっか」
任されたっていうのに先生は嫌な顔一つしない。むしろいつもみたいにふにゃんと笑ってる。
あたしの手からポスターとセロテープを受け取って歩き出す。
「あ、先生どっちか持ちますよ」
「んー、じゃあ貼るときに持ってよ」
やっぱりのんびりしてる。
廊下の窓から外を眺めて「今日は野球部の声聞こえないね」なんて言って残念がってる。
「野球好きなんですか?」
「野球は、別に。体育くらいでしかやったことないからね」
「先生って、学生の時ずっと美術部だったんですか?」
「ううん、中学ではサッカー部だった」
あれ、意外だな。
まぁでも言われてみたら運動出来そうな体格してるもんね。
「野球部の声って大きいから、美術室からいつも聞こえるでしょ?それが聞こえないと寂しいじゃん」