ねぇ、先生。

「はい、あげる。」

約束通りそのポスターをくれて、残りの9枚は自分の手に持った。

「…ありがとうございます」

「こちらこそ、貰ってくれてありがとう」

あ、嬉しそうだな。

前から思ってたけど、先生って感情が顔に出やすいっていうか…

ほんとにすごくマイペースだ。


「先生、どこ行くんですか?」

ポスターを全部はがし終わったのに、先生は教室とは真逆の方向に歩いていく。

「これ美術室に置いてくる。」

あぁ、そういえば言ってたな。

「咲良さんはどうする?先に戻ってる?」

「あたしも行きます」


ポスターを書き終わってから一度も行ってないから、あの独特な匂いも、先生が絵を描いてる姿も忘れてしまいそうだった。

どうせあの絵を描き終わったら忘れてしまうんだろうけど、少しでも長く覚えておきたかった。

少しでも多く、あの雰囲気を感じておきたかった。
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