【完】切ないよ、仇野君
「今日さぁ、朝から泰ちゃんが落ち込んでたと思ったら、教室行ったら雅美にいきなり腹パン喰らったんだわ」


「雅美に?」


「そー。お前愛されてるよなあいつに。『あんたちーに何したつや!ちーが休むとか尋常じゃなか!ふざくんな!』って。いきなり俺を疑う辺りヒデェよな」


今日のことを思い出したのか、椿は楽しそうに笑いながらそのことを話す。


私は雅美みたいに上手く立ち回れないからって雅美に勝手に嫉妬してたのに、雅美は私のことを、凄く心配していてくれてる。


そのことが嬉しくて、情けなくて、また泣きそうになるのを堪える為に、下唇を前歯で噛む。


「ふはっ!あんな小さい、ミートボールみたいな丸々した手で殴られても痛くねぇし。……でさ、それ見てた泰ちゃんが、昨日のこと全部ゲロったんだわ」


そうか、それで、全部の事情を知っているんだ、椿は。


「で、ちーは何に沈んだの?泰ちゃんは『やってしまったこと』しか話してくれなくて。ちー、泰ちゃんのこと好きじゃん?何か言われたことに傷付いたんでしょ?雅美もそこ、心配してたけど」


泰ちゃんは多分、私にキスしてしまったことで私がこうなってるって思ってるけど、そう思ってるのはやっぱり泰ちゃんだけで。


椿本人に、言われてしまったことを話してもいいのか迷ったけど……心配かけてるし、ちゃんと話しとかなきゃ。
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