【完】切ないよ、仇野君
翌日、椿のおかげで少し心が軽くなった私は、いつもより早く学校に行き、皆よりも、由貴先輩よりも先に一番乗りで体育館でボールを磨こうと決めていた。
それは昨日休んだ分の謝罪もあるけど、必要だと言ってくれた椿への感謝を込めて、出来ることをしようと思ったから。
けれど、学校に来たら、体育館からは光が漏れている。
「由貴先輩かなぁ……?思ったよか早か」
一番乗りじゃなったことに少し残念な気持ちを抱きつつ、体育館の中に入ると。
……広い、Tシャツ越しにも分かる発達した僧帽筋の窺える背中を持った彼が、生暖かい体育館でひとりポツンと座り込み、ボールを磨いているんだ。
「……泰ちゃん?」
その背中に声をかけると、肩がぴくんと震え、私の方に振り返る。