【完】切ないよ、仇野君
「って……あれ?」


周りをキョロキョロと見ていたせいか、気づいたら皆の輪と外れてしまい、一人ぼっち。


動くべきか、動かないで誰かが来てくれるのを待つか。


水高バスケ部に用意された荷物置き兼着替える場所は、ここに来たことがある去年からの部員だけだし、でも、誰かを待つのは迷惑かけるし……。


得意のうじうじでその場で足踏みして、結局その場に立ち止まってしまう。


「おい!そんジャージ水高か?細か新入生やな!」


そんな私だったけど、後方から男の子の声が飛んできて、肩を震わせ振り返る。


「ありゃ?お前女か!すまん、髪の毛短かし背んたっかもんやけん、男かと思ったわ!」


その声を発した男の子は、艶々のオレンジブラウンのベリーショートを揺らす、人懐こそうな子。
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