【完】切ないよ、仇野君



試合を全て終わらせて、水高は全勝、次に肥後学、荒商、菊池の順番でフィニッシュを迎えた。


「あー悔しい!本番では絶対勝つけん、足洗って待っとれ!」


「幸ちゃん、首な、首」


肥後学の町屋君の言葉につっこむ椿を見ていると、やっぱり仲良しなのが分かって笑顔になる。


勝った私達も負けた学校の皆も、なんだかとても和やかに、爽やかに笑っている。


でも、今日はその輪の中でいつも一際太陽のように輝く笑顔の彼がいない。


私の思い違いじゃなかったら……多分。


「歩君」


フロアの隅っこで、誰にも声をかけられたくないと言わんばかりに険しい顔をした彼は、ペットボトルを握りしめ、俯いていた。


「歩君」


二度目の呼びかけでようやく顔を上げた歩君は、泣き出す前の子供みたいな顔。
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