【完】切ないよ、仇野君
その顔を無理矢理笑ってるみたいな顔にした歩君は、到底綺麗な顔とは言えない。


日焼け知らずの白い肌からは、大粒の汗が滲んで、ボロボロと落っこちている。


そんな歩君の左肩にそっと手を添えると、その大きな玉の汗が、私のジャージの裾にポトリと落ちて滲んだ。


「ちー、汗……きちゃなかけん」


「歩君、肩……無理したら試合本番出れんごつなる」


弱々しく言葉を発する歩君に、私の確信めいた勘をぶつけた。


黒色のカラーコンタクトで隠されたエメラルドグリーンが、その言葉によってみるみる大きくなっていく。


「なんで……?」


「分からんけど、分かるとよ」


歩君の疑問には残念ながらちゃんと答えることは出来ないけれど、この特技が私がこの場所にいる理由だから。
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