【完】切ないよ、仇野君
翌日、夏の湿度さえ弾けそうな晴天に、早起きしたせいで少しだけくらりと視界が揺らめいた。
インターハイ県予選の会場に向かうマイクロバスに、私と由貴先輩は必要な荷物を積んでいく。
「おう!そういう重たいもんは俺等に声かけんね!」
氷嚢と飲料の入ったクーラーボックスを持ち上げようとした私を手伝ってくれたのはケイ先輩。
「……っても、あいつ等にそんか紳士な考えなかろーばってんな」
クーラーボックスをバスの荷台に乗っけたケイ先輩は、朝から騒いでいる行雲キャンプと雫ちゃんに目線をやって、べぇっと舌を出した。
「あはは、ケイ先輩もこれから試合やけん、今日くらいジェントルせんで良かです。ありがとうございます!……でも、ケイ先輩のそういうとこ、私は好いちょります」
「うわ、俺ん時代来たばい!そうやろ?ふはは!」
すぐ調子に乗るし、声は大きいし、荒っぽいところもあるけれど、ケイ先輩はお兄ちゃんみたいでとても優しくて気さくで、頼りになる存在だ。