【完】切ないよ、仇野君
私と泰ちゃんは、ベスト8決定戦が始まっていた第二会場へと足を運ぶ。


こちらの会場には第二シードの歩君達もいるけれど、一番最後の試合みたいだから、私達の試合が終わってから観ることになるだろう。


泰ちゃんと私が観に来たのは、去年水高が破った、それまで王者だったチーム。


「こん学校には俺ん中学のチームメイトがおってな。かなりのユーリティプレイヤーやけん。オールラウンダーやけど、椿に負けん司令塔なんよ」


椿に負けない司令塔なんて、相当頭が切れて且つ、プレイヤーとしても巧い選手だということだ。


「ほら、試合始まった。あれ、あん6番が、言うとった選手」


泰ちゃんが指差した選手は、同級生とは思えないくらいのがっちりとした肩幅の男の子。


「あん高校は県内では絶対練習試合せんけん、手の内が見えん。ちーもちゃん観とった方がよかばい」


「う……うん」


昨年王者から陥落したチーム。彼等がどんな戦いをするのか、私が観た事実が、明日役立つかもしれない。


泰ちゃんのその言葉で、私はマネージャーとして少しでも役立てるよう、持ってきていたメモ帳とペンを取り出した。
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