【完】切ないよ、仇野君
『絶対観とった方が良か』という言葉の通り、この高校……慧心高校は、水高よりレベルの高い高校かもしれない、なんて弱気なことを考えてしまう程、出来上がったチームだった。


選手個人で行けば、泰ちゃんが言っていた6番の子の他に水高一軍に匹敵するスタープレイヤーはいない。


けれど、緻密に練られた作戦やチームプレイは、相手を一切寄せ付けないくらい。


「準決勝で荒商と当たるやろうけど……慧心のが今年は上かんしれん」


巧みなパス回しをする彼等を見て、泰ちゃんは難しい顔をして呟く。


「慧心は全国レベルや。間違いなか。……俺達も、うかうかしとられんね」


「うん。……大丈夫とは、正直言いきらん。南九州ん時も出て来とらんかったっちゃろ?一試合観たところで、未知数過ぎるばい」


こんな時行雲キャプテンがいたら、大丈夫って笑い飛ばしてくれるところだけど、考え過ぎる性格が似ている私や泰ちゃんは、二人してその出来上がった試合展開に黙り込んでしまう。
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