【完】切ないよ、仇野君
いつもと同じようにしか時間は進まないのに、今日は時間が加速してるみたい。
「由貴先輩……トイレ行ってきます!」
「はは、やけんちーちゃんが一番緊張してどやんすっとよ!」
試合までにもう何度、トイレに駆け込んだことか。皆を支えるマネージャーとして情けない。
由貴先輩の笑い声を背中に受けながらトイレへ駆け込みそこから出ると、男子トイレから、見知った顔が現れた。
「おう!ちーも緊張で腹下しとんの?」
「歩君……そんかこつ女子に言うたら嫌われるーばい」
荒商のジャージを纏った歩君は、いつもはヘアアクセでオールバックにしている髪の毛を下ろしていて、いつもより大人っぽく見える。
「ん?……ああ、のれん!」
その髪型をじっと見ていた私に、歩君は前髪ら両手でぴんと伸ばして冗談を返してくれた。
その日だまりみたいな笑顔は、私の加速した時間を緩やかな流れに変えてくれるみたいな、そんな不思議な魔力がある。
「由貴先輩……トイレ行ってきます!」
「はは、やけんちーちゃんが一番緊張してどやんすっとよ!」
試合までにもう何度、トイレに駆け込んだことか。皆を支えるマネージャーとして情けない。
由貴先輩の笑い声を背中に受けながらトイレへ駆け込みそこから出ると、男子トイレから、見知った顔が現れた。
「おう!ちーも緊張で腹下しとんの?」
「歩君……そんかこつ女子に言うたら嫌われるーばい」
荒商のジャージを纏った歩君は、いつもはヘアアクセでオールバックにしている髪の毛を下ろしていて、いつもより大人っぽく見える。
「ん?……ああ、のれん!」
その髪型をじっと見ていた私に、歩君は前髪ら両手でぴんと伸ばして冗談を返してくれた。
その日だまりみたいな笑顔は、私の加速した時間を緩やかな流れに変えてくれるみたいな、そんな不思議な魔力がある。