【完】切ないよ、仇野君



二日目の初戦、水高バスケ部は、昨日出られたかったキャプテン、雫ちゃん、それから泰ちゃんの三人が大爆発。


「んぎぃ!空中じゃボールはやらんわ!」


ゴール下、空中での戦いであるリバウンドをこれ見よがしに奪って、奪って、奪いまくる行雲キャプテン。


行雲キャプテンが繋いだオフェンスチャンスを、椿からケイ先輩、そしてワンショット……と見せかけて、雫ちゃんへと回っていく。


その際、雫ちゃんをマークしていた選手は泰ちゃんのファールギリギリの強めのスクリーンで阻んでいて、雫ちゃんを邪魔するものは何もない。


雫ちゃんは、その独特の、鋭く刺さるようなスリーポイントシュートを素早く放つ。


その細身から放たれたとは思えない程の鋭いショットは、後半第四クォーターに、ダブルスコアというトドメをさす得点となる。


「最後まで気ぃ抜くな!」


「「「「オオッシ!」」」」


行雲キャプテンが勝ちの雰囲気になっているチーム全体の緩みを引き締め、試合終了まで一秒たりとも油断なんかない。


隙のない、王者としてのプライドを見せつけるそんな展開で、私達水高バスケ部はベスト4へと駒を進めた。
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