【完】切ないよ、仇野君
他の初戦も終わり、ベスト4には水高、荒商、それから昨日観に行った慧心と肥後学が残る。


白熱したのは肥後学対、この間練習試合で戦った菊池との4決定戦で。


正直、肥後学と菊池だと菊池の方が格上のチームなんだけれど、肥後学は今日、町屋君とキャプテンさんのフォワード両名がノリに乗っていたのだ。


彼等は昨日の段階から調子が良く、ベスト8決定戦が凄かったのは行雲キャプテンから聞いていたけれど、ここまでとは思っていなかった。


「あの二人をマンツーマンで止めるのは厳しいな。肥後学は外の攻撃が弱いし、思い切ってダブルチームでやってみるしかないか……」


椿は自分の戦略ノートと小さなホワイトボードと睨めっこ。


「去年は俺等、チャレンジャーんポジションだったけん勢いもあったばってん、今年はそうやなかけんね」


「うん。特に俺の情報って無かったからやりにくかったところもあると思うけど、今年は違う。肥後学に限らず、どの学校もガードの俺の戦略を潰す研究をしてきてる」


胡座をかいてフロアに丸まってる椿の隣に膝を折り並んだ泰ちゃん。


頭を使って試合前に戦略を練っている二人とた対称的に、他の一軍三人は緊張感が無い。


行雲キャプテンとケイ先輩はエアー1on1をしているし、雫ちゃんに至ってはイヤフォンを耳に挿して一人の世界に行っている。
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